Spector改造/リペア英雄列伝 第2弾

SSD NS-5改(34inch scale,3knobs control model

(文と写真:Hiroさん感謝! 編集:CYCO)

SFCJで一番改造Spectorを愛用しているのは間違いなくHiroさんでしょう。プレイヤーとしてまたリペアマンとして、彼のSSD NS-5は理想に近づけるべく改造が随所に施されています。今回はその改造例をわかりやすく説明していただきました。どの改造もちゃんと妥協無き理由があるものです。特に、EMG DCピックアップで音づくりに苦労されている方(私だ)には役に立つと思います。みみかっぽじってききなさい鉄郎!byメーテル
1.EMG-DC →他のEMG-EXTENDEDシリーズへのPU交換
2.プリアンプ交換
3.フレット交換
4.ナット交換

改造は各自の責任の元に行ってください。当方も代理店・メーカーも一切責任は持ちません。でもがんばれ。


【EMG-DC →他のEMG-EXTENDEDシリーズへのピックアップ交換】

難易度:★☆☆☆☆

 EMG-EXTENDEDシリーズはピックアップ(以下 PU)本体と配線に使用するケーブルが四角い3Pコネクタで簡単に交換できるようになっています。したがって、PU交換は同じEXTENDEDシリーズである場合はPU本体の背面にあるコネクタを繋ぎかえるだけで、いとも簡単にPU交換を行うことが出来ます。互換性についてはEMG-"40"DCとEMG-"40"Jであれば数字の"40"が同じであるためPUサイズが同じで本体の加工無しで交換が出来ます。
 サウンドの傾向としてはDC > CS > P > J の順にパワーがあり、逆の順でブライトな傾向となります。
要するにパワーのあるヤツは低音寄りの特性だっていう事です。

 PタイプのPUに関してですが、35Pに関しては"P4"と"P"があります。"P4"は4弦用で"P"は5弦用となります。同様に40に関しては"P5"が5弦用、"P"が6弦用です。どちらとも中のマグネットの形状と長さが違うので注意しましょう。マグネットが入ってる位置は低音弦側がリア、高音弦側がフロントです。5弦用PUでは1〜2弦と3〜5弦とに分かれています。

 Jタイプはバータイプのシングルマグネットが入ってますので弦の数にかかわらず使用できます。マグネットは真ん中ではなくリア側に入っています。

 TW についてはコネクタのピンの本数が違うため半田付けおよびシングルとハムバッカーの切り替えスイッチ増設の必要がありますので注意してください。

 うちのSSD NS-5にはEMG-40DCが最初にマウントされていたのですが、スペクターと言えばPJなので(自分の中では)フロントに40P5、リアに40Jをマウントしました。PUの下に入れるスポンジはたくさん入れています。こうする事によってダイレクトでタイトなサウンドが得やすいと思います。PUがスコスコ動かないのでプレイもしやすいし。結果は非常に気に入っております。簡単、かつ効果的な改造じゃないでしょうか。オススメですっ。

参考までにEMG-EXTENDEDシリーズの本家ページ
SpectorのPはいわゆるリバース配置であるべきだと思う!ので、このPはありがたいですね。(編者)

【プリアンプ交換】

難易度:★★☆☆☆
 EUROPEシリーズと一部のUSAシリーズでは内蔵プリアンプがボリュームやバランサーと独立しているため、プリアンプの交換も楽しめます。
「うちのスペクターは全部のコントロールが同じ基盤上にあるから関係ないや」
と思った方、基盤を丸ごと外したら良いのです!全部外しても必要なものと言ったらボリュームポッド、バランサー(PUセレクター)、ダイレクトマウントジャックくらいのもんでしょ?(2ボリュームもありですね)外した基盤は簡単な配線図でも書いて(次にまた載せようとしたときに、何処に何を配線するか分からなくなったら困るので)一緒に大事にしまっておきましょう。
 スペクターは一部を除いて4つ以上ポッド穴が空いてるはずなのでフルに活用すればEMG-TWを載せて2ボリューム(SWポッドでシングルとハムの切り替え)+3バンドEQなんて事も可能なのです!この作業には半田付けが必須ですので、半田付けの自信の無い方やサーキットの配線の方法が分からない方はリペアショップにお任せしましょう。

 個人的には普段トレブルブーストをしないので何ですが、ブーストが好きな方にはアギュラーが評判良いようですね。EMGは素直な印象。バルトリーニのTBT系はもともとスペクターのオリジナルサーキットに近い特性だそうです。その割には何故かEMGとバルトリーニの組み合わせってなかなか無いですね。
っていうかTBT系を載せてるベース自体が少ないような・・・。

 うちのNS-5はボリュームをSWボリュームに交換。アクティブとパッシブの切り替えが出来るようにし、バランサーからセレクターSWに交換しました。プリアンプはCYCOさんと同じもの(年代別プリアンプ写真集を参照)が入っていましたのでコネクターを取り去り、ダイレクトに結線。ロスが無い分アタックに張りが出て元気なサウンドが出ました。が、サーキットが壊れたので、(ライブで物理的に壊れた。欠陥や不良じゃありません。)そのうちEMGのBT-Cを載せようと思っています。パッシブサーキットでもサウンドが良いので通常の使用には問題ないですけれどね。

【フレット交換】

難易度:★★★★★

これが「すり板」
フレットワイヤー

 使用しているうちにフレットが少し磨り減ったのと指板修正がしたかったので、どうせならフレットを交換する事に。

 まずは古いフレットを抜き去り、抜くときに出た指板のチップは接着しておきます。その後「すり板」(平面を出したサンディング用の木片)にサンドペーパーをつけ、指板修正のため指板を削っていきます。うちのNS-5は指板のRがきつめだったので少しフラット気味に仕上げる事に。150番〜600番程度のペーパーで仕上げていきます。この作業は出来上がりに大きな影響があるので慎重に進めていかなければいけません。このとき出た指板の削り粉は保管しておきます。

 ストレートな指板が出来上がったら、フレットを抜いた跡の溝は新しいフレットに合わせる&清掃の意味でももう一度切り直します。今回の使用フレットは国産の215。オリジナルのフレットより少し太く、国産のフレットの中では最も太い部類に入ります。国産のものはフレットのタング(足)が太めなので(女性の足は太くないほうが・・・ってそれはオレの好みだ。フレットとは関係ねぇよ。)リプレイスメントとして使用するとフレットが抜けにくい利点があります。ダンロップなどはタングが細いので一度溝を埋め、その後新たに溝を切り直す必要があるかも。
 溝切りが不適切だとフレットが十分に打ち込めなかったり、フレットが抜けやすくなったりしますので1本1本溝の幅と深さを確認しておきましょう。

 溝切りが終わるといよいよフレットを打ち込みです。浮きが無いようにプラスティックハンマーでフレットを打ち込んでいきます。打ち込みが終わると指板サイドにはみ出た余分なフレットを切断して指板サイドに合わせて削り、仕上がり一歩手前で先程の指板の削り粉を木工用接着剤と混ぜ合わせた物を指板サイドから見てフレットのタングの下に出来た隙間に充填、乾燥させサンドペーパーで削ります。この充填作業、美観上のものなので私は自分用のベースには行いません(笑)。

 その後、フレットの擦り合わせを行います。擦り板&400〜600番くらいのサンドペーパーを使って仕上げていきます。平らになったフレットの頭の整形も行います。その流れで順にペーパーの番手を上げて1200番まで磨いていきます。最後は金属磨き用のクロス(シルバーアクセサリーを磨いたりするもの)を使用すると簡単&綺麗に仕上がります。

 オリジナルより太いフレットにしたわけですが、思ったほどの音色変化は無かったです。音色変化よりもプレイアビリティが良好になった事のほうが大きいですね。

 フレット交換、指板修正、擦り合わせは技術を要するのと、ともすれば取り返しのつかない箇所ですので素人仕事はやらないほうが無難です。プロのリペアマンでも下手な人が多いですから。知人からの口コミで良いリペアショップの情報を得るのが一番かもしれません。

【ナット交換】

難易度:★★★☆☆


ヤスリ

 フレットを太くて高いものに打ち変えたため相対的にナットが低くなってしまいました。そこでナットを交換することに。
 ナット素材にはいくつか種類があります。オリジナルと同じブラスという選択もあったのですが、牛骨の明るいサウンドも捨てがたい!でもスペクターにクリーム色のナットは似合わない。(ボディカラーによるだろうけど)そこでカーボンを使ってみる事にしました。見た目にも色が黒なので違和感も少なそうです。加工性が非常に良いという利点もあります。牛骨よりも加工しやすいんじゃないでしょうか。

 まずは既存のナットを取り外します。もともとナットごと塗装されているのでカッターでナットが外せるように切れ込みを入れていきます。切り終わったら指板側からナットに「あて木」をし、プラハンマーで叩くと簡単に外れます。このとき外した後の木部に残った接着剤をノミなどで綺麗に取っておきましょう。新しいナットを付けたときの接着強度、ナット位置によるピッチに影響します。

 ではまず新しいナットの整形から。底面と指板に接触する面はきちんと平面を出しつつナットをヤスリやサンドペーパーで整形し、仕上げたら本体に接着します。接着には瞬間接着剤を使用します。ナットの底面と指板に接触する面に瞬間接着剤をつけ、安定するまで指で押さえておきます。
 くっついたらナットに鉛筆などで溝を切る位置にマーキングを行い、あらかた溝を切っていきます。ベースには精密丸棒ヤスリを使用します。細い丸棒ヤスリは東急ハンズなどで販売されていたと思いますので事前に購入しておきましょう。丸棒ヤスリは思ったところにキチッと溝を切りにくいので最初は目立てヤスリで跡を付けて
その跡の上から丸棒ヤスリで溝を切っていくと狙ったところに溝が切れると思います。
 大体の溝が切れたらその日は弦を張らずに放置します。瞬間接着剤が完全に硬化してないため弦を張るとナットが外れてしまう事が多いのです。丸一日ほど放置しておきましょう。
 完全に硬化したら弦を張りつつ溝の高さを好みの高さまで削っていきます。溝を切る角度は指板とヘッドの角度の中間くらいがテンション、チューニングの面で好結果が出ると思います。あまりギリギリの高さまで削るとナットに弦が馴染んで来たときに開放弦での高さが足りなくなりがちなので少しだけ高めにセットし、しばらく弾きこんでまだ高ければ少し削るといった感じのほうが良いでしょう。

 付けてみてカーボンは牛骨に近いサウンドが得られました。牛骨ほど開放弦が浮いた感じにはなりませんし、ブラスのようなコンプレス感も無いので扱いやすいサウンドです。加工性が良いということで気になる耐久性のほうですが、使用していて削れていったということも無いので問題ないでしょう。
【ブリッジサドルのセッティング】

難易度:★★☆☆☆
スペクターのオリジナルブリッジは非常にうまく出来ていて、オクターブと弦高に
限らずサドルの角度も調整する事が出来ます。
サドルの角度というのは意外と重要で、角度が悪いと弦振動を効率良く伝える事が
出来ません。特に低音弦側ではその調整が重要となってきます。

私のサドル調整法は、別頁(Spector資料館のオリジナルブリッジ調整法を必見!)に解説しましたのでそちらを参照してください。ここでは重複するので記しません。

改造としては、うちのNS-5はナット交換の時に使った丸棒ヤスリでサドルの溝を整形しています。
より確実に弦振動を伝えるためです。あと、テンションを稼ぐためにテイルピースを
削ってボールエンドのかかりを深くしています。
 以上、大まかなところでは私のカスタマイズはこんなところです。細かいのは・・・実は他にも少しありますよ(笑)。

(今後の展開に期待を!〜編者より)

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